工学院大学
工学部 電気電子工学科※ 電磁力応用システム研究室
※2017年4月電気システム工学科から名称変更予定
※2017年4月電気システム工学科から名称変更予定
2015年度森下研究室メンバー
磁石と鉄がくっつくのを見て、「不思議だな、どうしてこうなるのだろう?」と思ったのが、おそらく小学生の頃。それから約50年経った今も私は磁石が持つ力に魅了されています。私の研究テーマは「電磁力」。みなさんも「フレミングの左手の法則」のことはよく知っているでしょう。
電磁力は産業界の幅広い分野で活用されています。その最たるものが電気モーター。電気自動車から扇風機まであらゆるモーターを回す力は電磁力によってコントロールされています。また、昨今話題のリニアモーターカーも電磁力の高度な技術を駆使して開発されたものです。電磁力のメリットは電流によって力の調節ができること。また、電線さえあれば、安定的に制御し続けることができます。
電磁力活用のキーワードのひとつに「非接触」があります。代表例はもちろんリニアモーターカー。JR 東海が開発中の「超電導リニア」は、車体が浮いてレールと非接触になることで、時速500kmという超高速走行を実現しています。これは電磁力の可能性を世界に示した好例といえます。
私たちの研究室にも「非接触」をキーワードにした研究があります。それは「非接触搬送装置」の開発。これは半導体工場などですでに実用化されている技術で、天井にレールを敷き、そこに組み込んだ磁石ユニットで対象物を非接触の状態で運ぶというもの。つまり、天井から磁石で引っ張る力で対象物を浮かせたまま移動させるのです。半導体など精密機器の工場では微細なチリひとつが製品の品質を左右します。非接触搬送装置なら、ローラーなどの部品が摩擦する構造がないので、チリも出ないというわけです。この装置にはもうひとつ大きなメリットがあります。それは一定の条件が揃うと電流ゼロ、つまり消費電力なしの「ゼロパワー制御」が可能なのです。ゼロパワーならば省電力になり、維持費を抑えられるのですが、課題は導入コストの高さ。そこで、研究室では、電磁石の数を減らして、廉価で汎用性の高い搬送装置の開発に取り組んでいます。
私は、大学で電気工学を学び、卒業後は(株)東芝で技術者として25年以上働いてきました。先ほど説明した「ゼロパワー吸引式磁気浮上制御」の技術は、(株)東芝在職時に開発に取り組んだもので、特許も取得。夢中で学んだ電磁気学の知識を製品開発につなげられたのは、技術者として本当に幸せな経験でした。その後、私は(株)東芝を退職し、2010年から工学院大学で若手技術者を育成する道を選びました。
企業での技術者の経験を活かして、私が学生に伝えたいのは、「ものをつくるには、核となる手段が必要だ」というシンプルな事実です。研究室には自動車好きやロボット好きなどさまざまな学生が集まり、日々、実験に取り組んでいます。ここで、実際に手を動かして、教科書に載っている理論を実証し、「あーそうだったのか!」と納得したとき、知識は自分の武器となる"手段"になります。そして、身についたさまざまな知識と経験が歯車のように噛み合ったとき、新たな発明が生まれるのです。皆さんもぜひ、私たちの研究室で、自分の未来の可能性を広げてください。
永久磁石を90度転回しながら並べる「ハルバッハ配列」は、磁石の片側のみに磁界を集中させ磁力を強くできる。磁力が強い側を2列並べて相対させると、磁束密度の高い「ハルバッハ配列界磁」が誕生する。2列の間にコイルを置いて強い電流を流せば、鉄に匹敵する強固なパワーが生じ、その力を活用したのが試作中のコアレス発電機だ。モーターに鉄心がなければ軽量・小型になり、鉄の回転に起因する振動・騒音を低減し滑らかな作動になるので、市場での用途も増えるだろう。
非接触給電とは、人体に影響を及ぼさず、無線局の免許も不要な13.56MHzの周波数帯を利用した電力供給システム。いわば目に見えないコードで給電する仕組みで、実用化すれば家電製品のコードや充電ホルダーが一切不要になる近未来型のシステム。2つの音叉(おんさ)が共鳴し合うような、磁界共振結合の原理が基本だ。技術的には、送受信の両方に同一アンテナを設けるのが課題。また給電の飛距離はアンテナの直径に比例するため、小型アンテナによる飛距離の延長方法を模索中。
暮らしやインフラを支える電気は、さまざまな業界と接点があるため、電気工学系は就職に強い。例えばメーカーの製造ラインは、オートメーション化が著しく進み、ライン設計やメンテナンスには電気の知識が必須だ(写真は「非接触搬送装置」のイメージ)。建築業界では受注したビルの電気設備はもちろん、信号線・電源の設計や省エネ対策などにも専門知識が活きる。電気電子工学科※は取得できる資格が多く、研究室では電磁気と制御の領域も深く学べるため、多彩な業界で活躍できる道が開けている。
大学院 工学研究科
電気・電子工学専攻 修士1年
ハルバッハ配列という特殊な磁石配列を用いてリニアモーターを製作し、それをスピーカー内で使う研究をしています。この磁石配列によって、スピーカー内のコイル振動幅を前後に長くすることができ、共鳴する振動板の小型化も進んでいます。理論で終わらず、試行錯誤しながらの実機製作が本当に楽しいです!
※インタビュー内容は取材当時のものです。