JST 国立研究開発法人 科学技術振興機構

科学技術分野においてグローバルに活躍できる若手研究者を応援しています。

国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略研究推進部 部長 舘澤博子さん

科学技術・イノベーションへの期待はより一層高まっている

 2年以上続いた新型コロナウイルス感染症の脅威は収まったものの、国際情勢の変化、ロシアによるウクライナ侵攻、それらによる経済社会への影響など、世界はさまざまな課題を抱えています。また、依然として地球温暖化に起因する異常気象や地震などの自然災害も人々の生活に大きな影響を与えています。このような変革が求められる状況の中、科学技術・イノベーションへの期待はより一層高まっています。

 現在、私たちが最も意識しているのは、科学技術分野における日本の国際的影響力の向上です。日本が国際社会において今以上に強いリーダーシップを発揮し、地球レベルの課題解決に貢献していくため、2つの取り組みに注力しています。

 1つ目は、国際共同研究の推進です。国際秩序の変革と混乱の中、科学技術・イノベーション分野における日本への期待は非常に高まっています。この期待に応えるため、科学技術先進国との間で、最先端の分野や技術開発につながる情報を取得できるネットワークを構築し、世界トップレベルの研究者との共同研究の実施、および、それを通じた若手研究者の育成を目指していきます。

 2つ目は革新的な「グリーントランスフォーメーション(GX)技術」の推進です。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、革新的なGX技術の開発を抜本的に強化することが不可欠です。日本の強みである大学や公的研究機関による基礎研究力の蓄積を生かし、オールジャパンでの研究体制を構築していきます。

次世代の研究者・技術者を育成するさまざまな支援事業を実施

 JSTでは、次世代の研究者・技術者を育成するためのさまざまな支援事業を行っています。スーパーサイエンスハイスクール、科学の甲子園、グローバルサイエンスキャンパス等の取り組みについてはご存知の方も多いと思います。トップサイエンスを支援する事業でも、大学院生から参加できる「ACT-X」というプログラムを実施しており、20~30代の若手研究者が独自のアイデアで研究を推進し、失敗を恐れずチャレンジする活動を支援しています。

 その他、未来の科学技術・イノベーションを担う若い世代に向けた情報発信にも力を入れています。そのひとつが、「サイエンスアゴラ」です。これは科学と社会をつなぐオープンなイベントで、日本の科学技術をリードする大学の研究室や企業が集まり、さまざまな展示やワークショップを開催します。2023年秋もオンラインと実地での開催を予定しています。詳しくは下記の特設サイトでご確認ください。

今後、注目を集めるのは「デジタル技術」「GX技術」

 コロナ禍を経て、皆さんの学校でもデジタル技術を用いた新しいスタイルの学びが導入されたと思います。最近は、ChatGPTに代表される「生成AI」も注目を集めており、デジタル技術を正しく知り、使いこなしていく知識も求められます。

 社会のデジタル化が急速に進んでいますが、大学で学ぶ意義の本質は変わりません。大切なのは、自分にとって興味・関心のある分野を探すこと。「好き」という気持ちを持って学ぶことが重要です。もちろん周囲の仲間と協力する姿勢も大事です。ひとりでできることは限られます。仲間と一緒に知恵を出し合うことで、地球レベルの大きな課題にも挑めるのです。

 今後も「デジタル技術」「GX技術」のニーズはますます高まるでしょう。そして、世界を舞台に活躍するための語学力やグローバル感覚も求められます。ぜひ大学での研究を志している皆さんには、国境や分野の壁を乗り越えて、多様で優れた知見にアクセスしながら、新たな世界を切り拓いてほしいと思います。

JST 国立研究開発法人 科学技術振興機構

イノベーションのナビゲーターとして、科学技術の発展を牽引し、広く世界を先導する組織。大学や企業などの組織の枠を超えた研究体制(ネットワーク型研究所)を構築し、世界に誇る日本の研究と実社会をつなぐサポートを行っている。産学官連携、国際共同研究や科学技術分野の人材育成にも力を入れている。

https://www.jst.go.jp/

JSTでは「科学」と「社会」の関係を深める目的で、さまざまな立場の人たち(市民、科学者・専門家、メディア、産業界、行政関係者など)が参加し対話するオープンフォーラム「サイエンスアゴラ」を2006年度より開催しています。
サイエンスアゴラ2023は、オンライン(10月26〜28日)と実地(11月18〜19日会場:テレコムセンタービル他)で開催予定です。詳細は公式サイトでご覧ください。

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/2023/index.html