マナビ
教えて、先生!

Q.今、人気の企業が実践している効果的なマーケティングって?

A.それを買うことで「感動」や「満足」を得られる製品やサービスの開発・販売に力を入れることです。

従来のマーケティングでは
売れない時代が到来!

 「思い出の喫茶店」「約束」「真夜中の長電話」。これ、なんだかわかりますか? 正解は、アイシャドウのネーミングです。人気のコスメブランドCANMAKE(キャンメイク)の商品と聞けばピンとくる人も多いはず。それにしても、なぜこんなにユニークな商品名に? その理由をのぞいてみると、現代ならではのマーケティング事情が見えてきます。
 突然ですが、もし今、世界で初めてアイシャドウを売り出すとすると...。目元に陰影をつけて立体感を演出できる、すなわち「キレイになれる」と伝えるだけで、どんどん売れるでしょう。ライバルが現れたとしても「発色がいい」「肌に負担をかけない」などの魅力で差別化を図ることができます。こんな風に商品の機能や便益をストレートに訴求する売り方を「伝統的マーケティング」と言います。
 しかし実際は、アイシャドウはずいぶん前から数多く販売されています。それに、どの製品も改良が進んでいて、基本的な性能はほとんど変わりません。「キレイになれる」「発色がいい」「肌に負担をかけない」と言っても、消費者に選ばれないのです。そこで登場したのが「経験価値マーケティング」です。

すでに社会の常識!?
経験価値マーケティングとは

 「経験価値」とは、製品を使用したり、サービスを利用したりといった経験から得られる感動や満足感などのこと。感覚、感情、精神への刺激によって生み出されます。
 CANMAKEのアイシャドウの場合、消費者は個性豊かなネーミングの商品を使うことで、それぞれの世界観に浸ることができます。しかもCANMAKEでは、販売時に「カワイイに出会える」体験自体をアピールポイントとして位置づけており、「経験価値マーケティング」そのものと言えるでしょう。
 こうした事例は、あちこちで見かけることができます。例えばスターバックスの場合、従来のカフェと明らかな差別化を図っています。これまでカフェは「飲食や休息の場所」でした。これを「サードプレイス(ゆったりとリラックスできる場所)」として位置づけ、内装や音楽、接客まで違いを演出しています。
 IKEAの場合、販売する対象は椅子やテーブル、食器類ですが、展示の仕方に工夫があります。オシャレなリビング、ワイルドなアウトドアなど特定の場面を想定し、来店客に理想のライフスタイルを提案しているのです。

消費者ニーズの主役は
「モノ」から「コト」へ

 飲み物から雰囲気へ。家具から生活シーンへ。これらの変化は「モノ(機能・便益)からコト(経験)への移行である」と論じた人物がいます。「経験価値マーケティング」の名付け親でもある、コロンビア・ビジネス・スクール教授のバーンド・H・シュミット氏です。
 2004年3月、『経験価値マネジメントマーケティングは、製品からエクスペリエンスへ』という書籍を発売し、近年ますます注目度が高まっています。私のゼミでも、最初は本書を読み解くところからスタートします。
 この記事を読んで、ますますマーケティングに関心を持ったというアナタ。日頃から、世の中の企業が取り組むアクションの一つひとつに思いを巡らせてみてはいかがでしょう?
 「なぜスマホにレンズを3個、あるいは4個も取りつけたのか」「なぜ若者向けCMに、ベテランタレントが起用されているのか?」
 自分なりの考えが浮かんだら、誰かに話して意見交換をしてみてください。

大阪学院大学
商学部
金丸先生が教えてくれました
大阪学院大学 商学部 教授
金丸輝康KANAMARU Teruyasu

同志社大学商学部卒業、神戸大学大学院経営学研究科 博士後期課程単位取得退学。大阪学院大学商学部准教授、教授。所属学会/日本商業学会、日本消費者行動研究学会。オープンキャンパスでのブランドについての講義は、分かりやすいと評判。

金丸ゼミをご紹介

「経験価値マーケティング」について、理論と実践を通して学べるのが魅力である。まずは書籍や論文を通して理論を習得。ディスカッションを通じて多様な視点や考え方も身につける。実践としては、学生主体の製品開発から販売まで挑戦。大阪学院大学を卒業した起業家や経営者による「大阪学院フェニックス倶楽部」との産学連携企画を実施していく計画だ。