Special Interview

東京理科大学
理工学部 機械工学科

米本 浩一
教授

往還型スペースプレーンを実用化して誰もが宇宙を旅する未来を実現する!

ライト兄弟が世界初の有人飛行を成功させたのが1903年。
それから100年以上が過ぎ、毎日数百万人が飛行機に乗って世界中を旅している。
そして今、人類は、自由な旅の領域を宇宙にまで広げようとしている。

「ここ数年、スペースXやヴァージン・ギャラクティックといった企業の技術開発が進み、民間宇宙旅行が現実味を帯びてきました。私は、1980年代から、『スペースプレーン』と呼ばれる飛行機のような感覚で宇宙を往復できる宇宙船の研究開発に携わってきました。これはまさに人を乗せて宇宙に行って、帰ってくることを目的とした宇宙船で、世界中の研究者・技術者がその実現をめざして、技術開発に取り組んできました。宇宙ビジネスが注目される今、有人型スペースプレーンがついに実現されようとしています。私は、産学共同でメイド・イン・ジャパンのスペースプレーンを実現するための開発を行っています」

 そう語るのは、東京理科大学理工学部機械工学科の米本浩一教授。これまで、宇宙科学研究所(現JAXA)の有翼飛翔体HIMESや航空宇宙技術研究所と宇宙開発事業団(いずれも現JAXA)が主導した宇宙往還技術試験機HOPE-Xなど、数々の国家的宇宙プロジェクトに携わってきたこの分野のエキスパートだ。米本教授が手がけるスペースプレーンとは、「有翼ロケット」を指す。垂直に打ち上げるペンシル型の使い捨てロケットと違い、飛行機のような翼があり、自由自在に飛行を制御できるのだという。

「有翼ロケットとは、翼の揚力を使って飛行を制御し、再び着陸すること。つまり、再使用できる宇宙船です。飛行機の耐用年数は、20~30年といわれていて、2万回程度の飛行が可能です。一方、現状の宇宙ロケットは、使い捨てが基本。そのため、H-IIA、Bロケットでも100億円以上の莫大な打ち上げ費用がかかります。その点、有翼ロケットは再使用できるので、一度の打ち上げにかかるコストを抑えることができるのです」

 米本教授は、本来の専門は空気力学と誘導制御であるが、エンジン、機体構造、機械や電気・電子システムなどを統合するシステム技術に携わっている。HIMESやHOPE-Xの開発に参画した1980年代から、民間や防衛省向け航空機の開発経験をもとに、翼のあるロケットにこだわってきた。ペンシル型ロケットと違い、有翼ロケットは制御の難易度も上がる。しかし、これを克服し、何としても「翼があることの優位性」を世界に示したいと考えている。

「2005年から在籍していた九州工業大学で、無人有翼ロケットの打ち上げ実験を繰り返してきました。機体の名称は、『WIRES』。WInged REusable Sounding rocketの略です。2013年に、全長1.7m重さ42kgのWIRES#015を高度1kmまで打ち上げて以来、現在も北九州で飛行実験を続けています。平行して全長4.6m重さ1tのWIRES#013と#015を米国のモハベ砂漠で高度6kmまで打ち上げて回収する飛行実証実験の準備をメーカーの協力のもとJAXAとの共同研究として進めています」

 2017年、米本教授は異業種のメンバーと共にスペースプレーンによる宇宙旅行の実験をめざす大学発のベンチャー企業、株式会社SPACE WALKERを設立。2019年4月から研究拠点を東京理科大学に移し、その実用化に向けての研究開発を加速している。

「宇宙旅行は、まだ誰も実現したことがない未知の領域。成功すれば、その世界のパイオニアになれる面白さがあります。これからは、人類が生存圏を宇宙に拡大していく時代です。50年後、人が月や火星に住んでいてもまったくおかしくありません。私は、そんな夢を叶えるためのインフラをつくりたい。誰もが宇宙旅行をできる未来は、すぐそこまで迫っています」

PICK UP!

「宇宙理工学コース」と「宇宙教育プログラム」
東京理科大学の宇宙関連事業に注目!

 理工学研究科は2017年度から専攻を超えた6つの「横断型コース」を開設。「宇宙理工学コース」では、木村教授の研究をはじめとして、例えば、物理学専攻では宇宙に関する基礎的な天体物理学の理論的な研究が行われているなど、学生は「宇宙」について、専攻の枠を横断して広い視野で学ぶことができる。

 さらに注目したいのは、宇宙飛行士の向井千秋特任副学長を代表として開始した「宇宙教育プログラム」。受講生(大学生・高校生)が主体的にパラボリックフライト実験(微小重力実験)を計画、実践するなど、宇宙科学技術について「本物の知識」と「本物の体験」を学ぶことができる。講義、講演の一部は一般の聴講者も募集している。開講スケジュールなどの詳細は特設Webサイトで公開中!

米本浩一

東京理科大学
理工学部 機械工学科 教授

株式会社SPACE WALKER
取締役CTO

東京大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了。工学博士。川崎重工業勤務時代に文部省宇宙科学研究所有翼飛翔体HIMES、その後航空宇宙技術研究所と宇宙開発事業団の宇宙往還技術試験機HOPE-Xの研究開発に従事。次期固定翼哨戒機P-Xの開発を経て、2005年より九州工業大学大学院工学研究院機械知能工学研究系宇宙工学部門教授。2019年4月より現職。

有翼ロケット実験機WIRES#015

東京理科大学

7学部31学科を擁する理工系総合大学

東京理科大学は、7学部31学科、大学院は7研究科30専攻を擁する私立最大級の理工系総合大学です。創立以来、「理学の普及を以て国運発展の基礎とする」という建学の精神を貫き、日本の近代化に大きな貢献を果たしてきました。卒業生は、幅広い分野で活躍しており、就職実績は景気に左右されず、きわめて堅調です。

学部学科

■理学部第一部:数学科/物理学科/化学科/応用数学科/応用物理学科/応用化学科 
■工学部:建築学科/工業化学科/電気工学科/情報工学科/機械工学科 ■薬学部:薬学科/生命創薬科学科 ■理工学部:数学科/物理学科/情報科学科/応用生物科学科/建築学科/先端化学科/電気電子情報工学科/経営工学科/機械工学科/土木工学科 ■ 基礎工学部:電子応用工学科/材料工学科/生物工学科 ■経営学部:経営学科/ビジネスエコノミクス学科 ■理学部第二部:数学科/物理学科/化学科

主な就職実績(大学院含む)

日本IBM、ソニー、パナソニック、キヤノン、富士通、清水建設、NTTコミュニケーションズ、東日本旅客鉄道、TIS、アクセンチュア、NTTデータ、ソフトバンク、SCSK、トヨタ自動車、京セラ、日立製作所、ホンダ、三菱電機、KDDI、日本電気、デンソー、東京都職員、東京エレクトロン、東芝メモリ、日東電工、東日本高速道路、日立システムズ、みずほフィナンシャルグループ、イーピーエス、日本総合研究所、富士ソフト、メイテック、野村総合研究所、リコー、大成建設、竹中工務店、東京電力ホールディングス、凸版印刷、NTTドコモ、三菱ケミカルホールディングス、NECソリューションイノベータ、ディスコ、日本電産、日本HP、三井住友銀行、村田製作所、LIXIL、伊藤忠テクノソリューションズ、NTTコムウェア、東日本電信電話、オープンハウス・ディベロップメント、オリンパス、神奈川県横浜市職員、川崎重工業、JFEスチール、SUBARU、ダイキン工業、大和総研、日立ソリューションズ、リニカル
※2019年3月31日現在

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