Special Interview

株式会社SPACE WALKER

取締役CTO

米本 浩一

代表取締役CEO

眞鍋 顕秀

産学連携プロジェクトで
未来を切り拓く

東京理科大学の米本浩一教授が参画する大学発宇宙ベンチャー企業、株式会社SPACE WALKER。
大学で培った技術を商業化する「産学連携」の仕組みとはどのようなものなのだろうか?
取締役CTOを勤める米本教授と代表取締役CEOを務める眞鍋顕秀さんに話を聞いた。

日本には宇宙ビジネスの種
となる技術がたくさんある

眞鍋
株式会社SPACE WALKERは、2027年にスペースプレーンによる宇宙旅行を実現するために2017年12月に設立した会社です。2022年の科学実験用スペースプレーンの打ち上げ、2024年に小型衛星打上用スペースプレーンの打ち上げを経て、2027年には全長約16m重さ18.7tの有人スペースプレーンに乗員2名、乗客6名を乗せて、高度120kmまで打ち上げる予定です。
米本
私には、ずっとスペースプレーン実用化の夢がありました。その実用化までに時間がかかり、費用も大きいという課題を克服するために、経営の専門家である眞鍋さんをはじめとする若くて多彩なメンバーと協力する道を選びました。
眞鍋
私は大手監査法人で、株式上場のサポートを行っていました。今回、米本先生のプロジェクトを知り、宇宙ビジネスの可能性を感じて、協力することに決めました。
米本
日本には宇宙ビジネスの種となる技術がたくさんあるのに、実用化の面ではアメリカや中国に大きく遅れを取っています。私は国家プロジェクトにも参加してきましたが、安全面などを考慮していると開発は慎重になり、どうしても実用化までに時間がかかります。特に日本は、有人宇宙飛行に消極的な傾向があり、ならば民間でやるしかないと考えました。

小規模な組織だからこそ
スピーディに事業を進められる

眞鍋
2019年に入り、宇宙ビジネスはますます注目を集めていて、取り巻く環境も1か月単位でめまぐるしく変化しています。資金調達は、事業が進むにつれ10億円、100億円、200億円という規模になりますが、十分可能だと考えています。
米本
これは、ビジネスのプロだからできる発想だと思います。これこそが「産学連携」の意義ですよね。
眞鍋
とはいえ、宇宙ビジネスはまだまだ産業として確立していません。つまり、何が起こるか誰にもわからないのです。しかし、今回のプロジェクトには、世界に誇る日本の技術者たちが何十年も培ってきたノウハウがあるという大きな強みがあります。しかも、世界的なニーズも盛り上がっています。ここで「技術」と「ビジネス」をつなぐ意味は大きいと考えました。
米本
今回のプロジェクトには、IHI、IHIエアロスペース、川崎重工業などの大手航空宇宙機メーカーが参画し、またJAXA(宇宙航空研究開発機構)の支援も得ています。SPACE WALKERは、小回りの利くベンチャーなので意思決定にもスピード感があります。私はここで、システム技術を駆使して開発をまとめるリーダーとしての役割を担っています。
眞鍋
SPACE WALKERのメンバーには、大手メーカー出身者、大手広告代理店出身者、公認会計士、SNSのエキスパートなど多彩なメンバーが集まっています。みんな「宇宙旅行を実現したい」という夢を共有して、各自の強みを発揮しています。ただ、宇宙ビジネスをめざすうえで何より大切なのは、「確かな技術」です。これがないと夢の実現には永遠にたどり着けません。その点で、東京理科大学との連携は心強いです。

次世代を担う学生にも
開発現場を経験させたい

米本
私は、企業技術者としての経験も長く、その目からみて大学という教育研究機関は、もっともっと社会に貢献できる存在だと考えていました。今回のプロジェクトでは、東京理科大学の学生さんたちに、その専門性と研究意欲をもって、どんどん開発の場で活躍してもらおうと考えています。彼らをプロの現場に巻き込む教育研究のしくみづくりが今後ますます大切だと思っています。
眞鍋
米本先生の教育者としての面が出ましたね(笑)。私も学生さんたちに参加してもらうことには大賛成です。宇宙ビジネスはまだまだ成熟していません。これから産業として成り立ち、何世代も続いていくと考えると次世代の若者こそ、このプロジェクトに参加すべきなのです。宇宙はまだまだ謎の塊で、自分たちの研究成果が世界的なスタンダードになる可能性もあります。そういうところは、学生さんにとって大きなモチベーションになるのではないでしょうか。
米本
まずは、2022年、2024年の打ち上げを成功させて、しっかりこのプロジェクトを事業化していきたいと思います。やはり技術的に結果を出していくことが、産業としての継続につながります。そして、なんとしても2027年にスペースプレーンによる宇宙旅行を実現したいと考えています。日本が1980年代から積み上げてきた「有翼ロケット」の技術を継承し、実用化するのは、私にとっても最後のチャンスだと思っています。次世代の宇宙ビジネスを担う学生さんにこそ、歴史が変わるこの瞬間に立ち会ってほしいものです。

米本浩一

株式会社SPACE WALKER
取締役CTO

眞鍋顕秀

株式会社SPACE WALKER
代表取締役CEO

株式会社SPACE WALKER

2027年のスペースプレーンでの宇宙飛行実現をめざす大学発宇宙ベンチャー企業。「再使用型有翼式サブオービタルスペースプレーン」の設計、製造、運航サービスを行う。メンバーには、宇宙開発の技術者のほか、公認会計士、ファンド運営、メーカー勤務、広告代理店勤務などさまざまなバックグラウンドを持つ人たちが集まっている。