Professor

河北秀世

京都産業大学

理学部 宇宙物理・気象学科 教授
天文学/惑星科学

彗星や新星を観測・分析し
太陽系誕生の謎を解き明かす

太陽系の生きた化石「彗星」を
天体望遠鏡と分光器で分析する

 約46億年前に誕生したとされる太陽系。その大いなる謎を解き明かそうと研究を続けているのが京都産業大学の河北秀世教授だ。

 学生時代は情報工学を学び、卒業後は大手電機メーカーに就職。趣味で始めた天文学研究で数々の成果を出して研究者に転身したという異色の経歴の持ち主だ。今や世界でも指折りの天文学者となった河北教授の研究対象のひとつが彗星である。

「彗星は氷や塵などでできた小天体で、太陽系誕生の際に惑星などをつくった材料の塊の生き残りだと考えられています。つまり彗星は、46億年前の姿をとどめ続けている『生きた化石』です。彗星を詳しく調べることで太陽系誕生の秘密を解き明かそうとしています」

 河北教授が研究で用いるのは分光学という手法だ。彗星は太陽に近づくと氷が溶けてガスを発生させる。そのガスが太陽の光を吸収して再放出する際のパターンを分析するのだ。原子や分子はそれぞれ特定の光だけを吸収・放出するため、光を分離して解析することでガスに含まれる原子や分子を特定できる。

「天体望遠鏡で彗星から集めた光を分光器にかけ、波長によって数万色に分離して分析を行います。この手法はまさに物理学です。謎に満ちた宇宙の正体が、物理学を通して目に見える形で現れるのが研究の醍醐味です」

神山天文台で開発した観測機器で
世界初の新星爆発を学生が発見

 河北教授の研究拠点は、自身が台長を務める京都産業大学神山天文台だ。国内最大級の口径1.3mの反射式望遠鏡をはじめ、多彩な観測装置や実験・開発機器を備えている。神山天文台の特徴は、産学連携で独自の観測装置の開発も行っている点だ。

「研究のひとつの価値は、オリジナルのアイデアや手法によって、人と違う観測・分析を誰よりも早く行うことにあります。だからこそ私たちは独自の装置開発を行い、神山天文台でしかできない観測・分析を行っています」

 実際に、近赤外線を約7万色に分離して分析できる世界屈指の近赤外線高分散分光器や、可視光の偏光情報を約1万色に分解した光ごとに測定できる世界的にも珍しい可視光高分散偏光分光器などを、河北教授や学生・研究員が国内外の研究機関や企業と協力して開発し、数々の成果を上げている。

 成果のひとつが、京都産業大学の学生による世界初の新星爆発の発見だ。通常は非常に高温となる新星爆発だが、分子が存在するほど低温の新星爆発を発見したのだ。

「神山天文台はキャンパス内にあり、学生でも毎日使用できます。他の天文台にはない地の利を活かすことで成し得た新発見です。新星は爆発の瞬間に多くの元素を生み出し、新星爆発時にだけつくられる元素も存在します。それらの元素は彗星や隕石などにも含まれており、新星を研究することで、太陽系を形成した物質がどこから来たのかを解明することにもつながります」

分光器による解析データ。神山天文台で学生が中心になって観測を行い、それまでに知られていなかった新しいタイプの新星爆発を発見した

国際的な彗星探査計画も先導し
物理学で宇宙の真理に迫る

ESAとJAXAの彗星探査計画に参画
長周期彗星の直接探査を目指す

 河北教授は、欧州宇宙機関(ESA)と日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2029年の打ち上げをめざしている彗星探査計画「コメット・インターセプター」にも参画し、科学的諮問機関のJAXA側の代表も務めている。

 コメット・インターセプターでは、宇宙に探査機を飛ばし、長周期彗星を直接探査する計画だ。

「長周期彗星は太陽に熱せられた回数が少なく、短周期彗星よりも46億年前の状態を正確に保っていると考えられます。探査が成功すれば太陽系誕生の謎の解明にさらに近づきます。また、地上望遠鏡では観測できない彗星の核を直接探査すれば、今後の彗星研究の精度も劇的に向上させられます」

 また、原理的には恒星間天体と呼ばれる太陽系以外の小惑星や彗星の探査も可能だという。もし実現すれば人類初の偉業であり、太陽系以外の惑星系での惑星形成環境の推定もできるのだ。

「天文学は終わりのない探究活動であり、謎解きのような極上の楽しさがあります。今後も研究を続け、生涯をかけて宇宙の真理に挑み続けていきます」

神山天文台の荒木望遠鏡は国内私立大学最大の天体望遠鏡である

河北教授と京都産業大学の学生、企業が連携して試行錯誤を重ねながら開発した分光器。神山天文台の天体望遠鏡が捉えたかすかな光を多くの色に分解して詳細な分析を行える

ESAとJAXAの彗星探査計画「コメット・インターセプター」にも参画。宇宙に飛ばした探査機を用いて、長周期彗星を直接探査して太陽系誕生の謎のさらなる解明をめざす。原理的には、恒星間天体という太陽系以外の小惑星や彗星を探査することも可能だという

京都産業大学

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本学で学ぶ醍醐味ともいえるのが、教養が身に付く共通教育科目。ワンキャンパスの特長を生かし、学生が自らの専門分野を深く学ぶだけではなく、バランスのとれた世界観と幅広い教養を身に付けていくため、多彩な科目を開講しています。例えば、データサイエンス科目「データ・AIと社会」では、データサイエンスおよびAIの最新事例を多方向から学修。また、今年度より起業をめざす全学部の学生を対象に「アントレプレナー育成プログラム」を始動。イノベーションの創出と社会的課題を解決する力をもつ人材を育成するため、文理融合教育を進めています。

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