Professor

髙木直史

金沢学院大学

情報工学部 情報工学科 教授
コンピュータ工学

コンピュータの性能向上が
世界を前進させる力になる

情報技術の進化のスピードに
翻弄されない力を得るために

 私たちの暮らしに不可欠なスマートフォン、注目されるAIやデータサイエンスなど、留まることを知らない情報技術の進化。最新技術を活用したビジネスやサービスによって、20年後の日常はどう変わっているのか? そんなワクワクから情報分野を学びたい読者も多いだろう。そこで流行りの技術に飛びつきたい気持ちもわかるが、少し立ち止まって考えてみよう。情報技術の驚異的な進化のスピードのなかで、現在注目されているアプリやサービスは20年後にも役立つのだろうか、と。

「もちろんアプリやサービスの開発も社会に与える価値は大きい。一方で情報工学の技術者として長く活躍するならば、基礎を身につけることが重要です。コンピュータや情報処理の基盤技術、基礎理論を深く理解すれば、技術がどれだけ進んでも、その進化に置いていかれることのない技術者になれるのです」

 そう語るのは2024年4月、金沢学院大学に新設された情報工学部情報工学科の髙木直史教授だ。1980年代から日本の情報分野の進化を支えてきた研究者で、これまで名古屋大学や京都大学で行ってきた研究から生み出された革新的な成果は、数々の製品に活用されてきた。そんな髙木教授が取り組んできた領域はコンピュータ工学と呼ばれる。“コンピュータで何をするか”だけでなく、“コンピュータそのものの機能を高めていく”ことを追求する分野で、髙木教授は世界的な第一人者の一人である。

ソフトウェア上での集積回路の駆動シミュレーション

コンピュータ工学の第一人者として
情報技術の発展を支えてきた研究の数々

演算処理速度を大幅に高める
新たなアルゴリズムの開発

 髙木教授の研究成果が、情報工学分野に新たな領域を誕生させた歴史がある。それが「ハードウェアアルゴリズム」という領域だ。

 コンピュータとはいわば精密な高速計算機である。そこでは誰でも知っている「+・-・×」といった計算が主に繰り返されていて、足し算回路や掛け算回路が入っている。髙木教授が学生の頃、高速の掛け算回路は構造が複雑でひとつのLSI(大規模集積回路)ではつくることが難しく、ひとつのLSIでつくられた既存の単純な構造の掛け算回路は、あまり高速なものではなかった。

 そこでLSIを用いて高速の回路をつくるのに適した処理手順(アルゴリズム)を組み立てるのが「ハードウェアアルゴリズム」の研究だ。髙木教授は計算に冗長2進表現という数表現を用いた掛け算の新しいハードウェアアルゴリズムを開発。その技術は現代の情報社会を支える大規模なデジタル集積回路をはじめとして、コンピュータの性能向上に大きく貢献してきた。

「私が開発したアルゴリズムを実装した機器が研究当時の世界最速を記録したこともあり、演算回路や暗号技術に関連する高速処理の成果は、携帯電話などの多くの製品に活用されました。『工学』とは人の暮らしや社会を豊かにするためのもの。情報工学に取り組むうえで、欠いてはいけないポイントです」

社会に、世界に貢献できる
コンピュータ工学のスケール

 髙木教授の取り組むもうひとつのテーマに「超伝導コンピュータの技術開発」がある。情報化が進む世界ではいま、膨大な情報を処理するデータセンターの消費電力が課題となっていて、数年後には世界中の電力の10%を消費するという予測もある。情報処理速度の向上に加えて、消費電力の削減も叶えるのが、超伝導コンピュータの特徴。髙木教授は従来とは異なるパルスを情報伝達に用いる手法で、超伝導コンピュータの基盤技術の開発に注力する。

「半導体の処理速度は10年間で約100倍になると言われており、20年間では1万倍になる計算です。これは現在のコンピュータで1万年かかる情報の処理が、20年後には1年間でできるようになる、ということ。その成果は日常の暮らしだけでなく、あらゆる分野の研究や調査・分析にも関わってきます。半導体やコンピュータの進化は、世界が前進するための力になるもの。これからも超伝導を含めて、最前線での挑戦を続けていきます」

 髙木教授が語る通り、いまやコンピュータの力は人類が前に進むための力だと言ってよい。そんなスケールの大きさがコンピュータ工学の持つ魅力である。髙木教授が学部長を務める情報工学部は、技術の応用だけでなくハード・ソフトの基盤技術・基礎理論への理解を重視するカリキュラムが特徴。そこには髙木教授から次世代の情報エンジニアに向けた、大切なメッセージが込められているのだ。

回路設計用のソフトウェア上で、CPUを設計する際のダイアグラム図。各パーツの動作をプログラミングで記述していく

制作した回路が意図した通りに稼働するかをシミュレートした後、ハードウェア(FPGA:論理回路の書き換えが可能な集積回路)に組み込んで動作を検証する。実際の組込みまで行うことで、技術への理解度がさらに深まる

金沢学院大学

2024年4月、情報工学部情報工学科が誕生!

AIやデータサイエンスといった最新鋭の情報技術の進歩に注目が集まる中、金沢学院大学では、初の理系学部となる情報工学部情報工学科を新設しました。近年増加する文理融合型の情報系学部とは異なり、注目される最新技術だけでなく、その土台となるハードウェア・ソフトウェアの基礎を深く理解する学びが特徴で、情報処理学会が推奨するコンピュータ科学、コンピュータ工学、データサイエンスの3つのカリキュラム標準に準じて科目を構成しています。

最高水準の教員陣のもとでデジタル新時代を担う人材に

1年次で数学や物理、コンピュータ科学の基礎を身につけた後、2年次のコース選択では「コンピュータ工学コース」と「データサイエンスコース」の2コースを設置。コンピュータ工学コースでは、組込み制御系や情報ネットワークの設計・開発、運用を担う人材を育成し、データサイエンスコースではビッグデータの収集・分析やAI技術を深く理解していきます。教員陣には、コンピュータ工学の世界的な第一人者である学部長の髙木直史教授をはじめ、最先端分野の研究と教育を行ってきた最高水準の教育者が集結。あらゆる業界・業種でニーズが高まるデジタル人材をめざすだけでなく、高校「情報」と中学・高校「数学」の教員免許の取得も可能です。

学部学科

■情報工学部:情報工学科(コンピュータ工学コース、データサイエンスコース) ■経済学部:経済学科(経済学専攻、経済情報学専攻)/経営学科 ■文学部:文学科(日本文学専攻、英米文学専攻、歴史学・考古学専攻、心理学専攻) ■教育学部:教育学科(小学校・中学校教諭専攻、幼稚園教諭・保育士専攻) ■芸術学部:芸術学科(絵画専攻、造形専攻、ビジュアルデザイン専攻、デザイン工学専攻、映像メディア専攻) ■栄養学部:栄養学科 ■スポーツ科学部:スポーツ科学科(アスリート・指導員養成専攻、体育教員養成専攻、公安・公務員養成専攻、スポーツビジネス専攻)

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