Professor

前山利幸

拓殖大学

工学部 電子システム工学科 教授
通信・ネットワークシステム

IoT社会や次世代5G通信を
電磁波解析の先端技術で加速させる

スマートフォンから放射された電波を
解析し、効率的なアンテナ設計に生かす

 電波の技術で、次世代の豊かな社会をつくる─。拓殖大学工学部電子システム工学科の前山利幸教授は、スマートフォンの通信性能の向上から、農業・防災へのIoT導入、次世代通信規格5Gの通信方式まで「電波」の技術を用いた幅広い研究に取り組んでいる。

 スマートフォンが日本でも浸透しはじめた2010年頃。前山教授は当時、通信技術で苦戦していた某社のスマートフォンの内蔵アンテナについて解析を行った。

「アンテナから電波がどのように放射されているかを分析し、効率的に通信ができるアンテナを研究しました。当時はまだスマートフォンの電波の解析・評価の手法が確立していなかったので、いくつかの企業からオファーを受け、新しいスマートフォンが出るたびにアンテナの解析に取り組んでいましたね」

 具体的には、電波暗室のなかでスマートフォンを通信させた状態で通信性能を計測し、どのように電波が出ているのかを三次元のマップで可視化。そこからアンテナの特性を把握し、設計に役立つデータを取得するのが前山教授の解析手法だ。

「電波暗室の中だけではなく、街中でどこまで電波が届いているのかを調べるのも、電波伝搬という電磁解析の役割なんです。その分析の結果によって、どこに携帯電話の基地局を置けば良好な通信が可能になるのかがわかるようになるのです」

スマートフォンから放射された電波を3次元で計測したグラフ。携帯電話会社やスマホメーカーと共同で、スマートフォンのアンテナの設計開発に取り組んでいる

新しいスマートフォンが発売されるたびに
アンテナの解析に取り組んでいた

農業・防災の分野に
IoT技術を導入

 そして、次に前山教授が取り組んだのは農業や防災などの分野へのIoT技術の導入。IoTを実現するためにはアンテナや通信の技術が必要とされているからである。

「2018年、猛暑の影響で養蜂家の方々が育てていた蜂が大量に死んでしまったのです。そこで、蜂の巣箱の中にIoTのデバイスを設置し、温度や羽音のデータをクラウドに飛ばすことで、常に蜂の様子を把握できるシステムを導入しました。この分野はまだほとんど研究している人がいないので、まだまだ発展の可能性があります」

 さらに、拓殖大学のある八王子市と地元企業との産学官連携事業で、川の増水を知らせるIoTの開発にも取り組んでいる。

「これまで、大雨が降ると市の職員の方が市内を流れる複数の川へ見回りに行っていました。それを、センサで川の水量を測るデバイスを橋桁に設置することで代替しようという研究です。これは研究室全体で取り組んでいるのですが、テレビ局が取材に来るなど注目を集めました」

電波環境のシミュレーションで
5Gが使用できる周波数帯を見極める

「電磁波解析」の技術を軸に幅広い分野の研究に挑戦してきた前山教授が現在、最も力を入れているのが次世代通信規格5Gだ。

「来年には、5Gのサービスが開始されます。今まで携帯電話の通信に使用してきた電波だけでは足りないので、5Gでは『ミリ波』と呼ばれる高周波の電波を使うのですが、ミリ波は周波数が高くアンテナも小さくなるため解析は非常に難しい。また、限りある周波数を効率的に利用する通信システムのシミュレーションも行っています」

 具体的には、電波環境のシミュレーションによって「使用ができる周波数帯」を見極めていくのだという。

「電波の干渉を防ぐには、まずは人々がどのように電波を使うのかを把握しなくてはいけません。シミュレーションによって電波が使用される時間帯と周波数帯をグラフ化し、いつ・どの周波数の電波が使えるのかを数値解析で理論化します。また、シミュレーションだけではなく実際に渋谷の街頭などでどのような電波が使われているのかのデータを収集することもあります。いかに効率よく電波を使うかを理論化して5Gの本格的なサービス導入に備えるのが、この研究の目的です」

 5Gのフルサービス開始は2025年と言われている。通信の「高速化」「大容量化」「低遅延化」を実現したこの通信技術は、私たちの社会をどう変えていくのか。前山教授の研究にかかる期待は大きい。

防災×IoTの取り組み。八王子市と地元企業と連携し、川の水の増減を感知するセンサーを取り付け、データを収集

拓殖大学

多様な進路選択で、自分にぴったりの学びを見つけよう

豊かな緑に囲まれたキャンパスと教員の細やかな指導が強みの拓殖大学工学部。1年次に幅広い分野の基礎を学び、2年次より各分野に特化した専門知識とスキルを追究できる20コースから、自分の関心や興味、進路目標にあわせてコースを選択します。

グローバル人材を育成する「国際エンジニアコース」も

学科の枠を超えた複合的な知識を身につけるコラボレーションコースも設置。2年間のアメリカ留学でグローバルに活躍できる人材を育成する「国際エンジニアコース」をはじめ、工学部独自の留学制度も充実しています。入学後、早い段階でキャリアデザイン教育を開始するのも大きな特長で、将来の仕事を意識することで学びへの意欲を高めます。

学部学科

■ 商学部:経営学科/国際ビジネス学科/会計学科
■ 政経学部:法律政治学科/経済学科
■ 外国語学部:英米語学科※1 /中国語学科/スペイン語学科/国際日本語学科※2
■ 国際学部:国際学科※1
■ 工学部:機械システム工学科/電子システム工学科/情報工学科/デザイン学科
※1 2020年度に定員増
※2 2020年4月に開設

主な就職実績

関電工、協和エクシオ、太平電業、きんでん本社、三冷社、大和ハウス工業、NT ファシリティーズ中央、中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京、三笠産業、東プレ、東芝エレベータ、ツガミ、福島工業、鶴見製作所、小池酸素工業、NC ホールディングス、富士通ゼネラル、日星電気、アルプスツール、多摩川電子、日本シイエムケイ、日立産業制御ソリューションズ、スズキ、ボッシュ、ショーワ、今治造船、日信工業、昭和飛行機工業、日本精機、長野オリンパス、矢崎総業、リコージャパン、日立建機日本、扶桑電通、富士ソフト、国際ソフトウェア、テクニカルジャパン、NTT 東日本グループ会社、ジュピターテレコム、日立ビルシステム、アルプス技研、日本サード・パーティ ほか

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