Professor

芥子育雄

福井工業大学

工学部 電気電子工学科 教授
機械学習/人工知能

「社会活動」の重みが大きな上位1000ツイートの中で、出現回数の多い単語を大きく表示したもの。こうして可視化することで傾向がわかりやすく見える

ニューラルネットワークと
人の知見の融合に挑む!

ニューラルネットの解釈力を
辞書による意味表現学習で高める

 近年、人間の脳の神経細胞の仕組みをコンピュータ内に実現する「ニューラルネットワーク」や、その発展形である「ディープラーニング(深層学習)」など、AI技術の進展がめざましい。

「すでに画像認識は人の性能を超えています。そうした人が直感的に判断する部分、パターン認識をする部分については、ニューラルネットワークが非常に相性がいいのです。けれども、人の脳は直感だけでなく、解釈や推論する部分がうまく組み合わさって動いています。現状のニューラルネットワークは、その解釈する部分がまだ苦手です。私の研究テーマの1つは、ニューラルネットワークが学習するところに、人の知見である辞書を埋め込み、その辞書を基に学習(意味表現学習)させることで、解釈する力にも優れたニューラルネットワークを開発することです」

 こう語るのは、福井工業大学工学部電気電子工学科の芥子育雄教授だ。

 研究の一環として、研究室の学生と共同で取り組んだのが「福井の学生分析」。研究ではまず、福井の学生のツイートを113名分フォローする。インターネット百科事典のウィキペディアを用いてニューラルネットワークを意味表現学習させたところ、そのツイートのなかから、食事、社会活動、教育など、事前に設定した264分野の特徴単語との関係付けを行い、自動的に分類した。

「この研究成果は今後、多様な活用が可能です。分野ごとに出現回数の多い単語を抽出すれば、学生の嗜好が見えてきます。例えば、福井の学生が休日にどんなイベントに参加しているのか、旅行はどこに出かけているのか、まさにマーケティングに使えるわけです。一定の傾向が分かれば、新たなビジネスの創出や、自治体の政策立案などへの活用が期待されます」

「社会活動」「教育」を軸としたカテゴリ分析

「AI&IoTセンター」を開設
AI技術を地域活性化に役立てる

多様なデータの掛け合わせと
AI解析で新たな価値を創出

 福井工業大学では、今年4月、「AI&IoTセンター」を開設し、芥子教授がセンター長に就任した。このセンターのミッションの1つが、「福井の学生分析」と同様に、AIやIoTの技術を用いて、新たな価値を創出し、地域の活性化に役立てることである。すでに、具体的なプロジェクトも始動している。

「現在、本学では、宇宙の街・福井をめざす『ふくいPHOENIXプロジェクト』が進行中です。あわらキャンパスには、北陸最大の直径10mのパラボラアンテナが設置されていますし、今年10月にはデジタルカメラを搭載した超小型衛星の打ち上げを予定しています。自律飛行で広域を長時間撮影可能なドローンも所有しています。それらが取得したデータのほか、ソーシャルメディアデータ、福井県の農業用データ『ふくいアグリネット』、地元企業のビッグデータなどを、クラウドに集積します。多様なデータを掛け合わせてAI解析することで、土砂崩れの危険性認識、除雪優先地域の判断、道路補修判断、電線の損傷検査など、地域の人々の生活に大いに役立てられると考えています」

 特に、地元から期待が寄せられているのが、農業分野へのAI技術の活用である。

「AI&IoTセンターには、9名の教員が在籍しており、それぞれの専門性を生かしたプロジェクトを推進できる点が強みになっています。例えば、大気レーダー、電波干渉計などの観測装置やドローンを用いた環境計測の専門家・中城智之教授が、稲の成長具合を撮影。その映像の解析に、木森義隆准教授の必要な部分だけを抽出する画像解析システムと、私の専門であるニューラルネットワークが自動的に分類する技術を組み合わせれば、稲の色や形などから、肥料を与える必要性や、適切な稲刈りの時期を判断することができるようになるでしょう。農家の方々にとって、きわめて有益な情報になるはずです」

 芥子教授は、シャープで長らく製品の評判分析など、研究開発の第一線に立っていた経験があるだけに、企業との連携にも積極的だ。「AI&IoTセンター」の誕生に伴って、産業界や自治体との協力体制にも弾みがつくことは間違いない。

意味表現学習を用いた福井の学生のツイート分析。研究成果を地域活性化につなげることを目標にしている

AI&IoTセンターの構想図。衛星データとIoT・ソーシャルデータの掛け合わせと、AI解析による新たな価値創出を目指している

福井工業大学

「工科系総合大学」として広がる学びのフィールド

福井工業大学は、常に時代に合わせて、社会が求める大学像を追求し続けてきました。現在では「工業大学」の枠を超えて、3学部8学科を擁する「工科系総合大学」へと進化を遂げ、工学から環境情報、そしてスポーツ健康科学まで、学びのフィールドは多彩に広がっています。

実就職率ランキング全国1位

福井工業大学の学生は、社会から高く評価されています。大学通信「ユニヴ・プレス」の調査によると、2018年3月卒業生の実就職率は97.9%。卒業生数500人以上1000人未満の大学の中で、実就職率ランキング全国1位の実績を示しています。就職者の2人に1人が上場企業・大手企業(資本金3億円以上または従業員300人以上)に就職しています。

学部学科

■ 工学部:電気電子工学科/機械工学科/建築土木工学科/原子力技術応用工学科
■ 環境情報学部:環境食品応用化学科※/経営情報学科/デザイン学科
■ スポーツ健康科学部:スポーツ健康科学科
※2020年4月、名称変更予定

主な就職実績

関西電力、中部電力、東京電力ホールディングス、北陸電力、きんでん、ピーエス三菱、NDS、ショーボンド建設、ダイダン、五洋建設、西松建設、鉄建建設、日成ビルド工業、飛島建設、北陸電話工事、大和ハウス工業、日本基礎技術、西日本旅客鉄道、NTT 西日本(西日本電信電話)、朝日印刷、インテック、前田工繊、ノザワ、富士古河E&C、テクノプロ テクノプロ・デザイン社、大同工業、シャープ、三菱電機、三社電機製作所、東亞合成、日本製鉄、UACJ、太平洋工業、住友電装、日立造船、スズキ、サカイオーベックス、セーレン、倉庫精練、I DOM、アルビス、PLANT、コメリ、ネクステージ、ゲンキー、愛媛銀行、福井銀行、大和冷機工業、クスリのアオキ、三谷産業、三協立山、三光合成 ほか

お問い合わせ先

〒910-8505 福井県福井市学園3-6-1
入試広報課 TEL:0120-291-780