棟方 渚
京都産業大学
情報理工学部 准教授
生体信号/バイオフィードバック/インタラクティブシステム
京都産業大学
情報理工学部 准教授
生体信号/バイオフィードバック/インタラクティブシステム
人と人工物との持続的なインタラクション。そんな耳慣れない研究テーマに取り組んでいるのが、京都産業大学情報理工学部の棟方渚准教授だ。馴染みがないのも当然で、棟方准教授が自らつくりあげた言葉なのだ。
「人はゲームに没頭しますが、あるとき、急に飽きてしまいます。何がモチベーションを維持し、何がモチベーションを阻害するのか。その関係性を科学的に探り、ロボットやゲームなどの人工物と人とが持続的に相互作用できる方法を研究しています」
力を入れる研究のひとつが、家庭用ロボットだ。人が愛着を抱くためにロボットがどんな振る舞いをする必要があるか探究している。
「例えば、人間なら相手の表情や声のトーンをとらえ『今は話しかけないでおこう』『違う話題に変えよう』と空気を読んで行動しますよね。そんな風にロボットも行動できれば人の愛着が持続すると考え、ロボットに空気を読んだ行動を取らせる方法を研究しています。具体的には、発汗や心拍数などの身体情報をロボットに送り、その際の挙動を分析して、システムやプログラムを改善していきます」
日常に違和感なく溶け込み、人が「一緒にいて楽しい」と感じられるロボットは、介護をはじめ幅広い分野での応用が期待できる。
人の情報をロボットに伝える際に重要となるのがIoT(Internet of Things/モノのインターネット)だ。スマートフォンやスマートスピーカーから収集した人の多彩な情報をロボットが活用できるようにする研究も欠かせない。そこで活躍するのが、京都産業大学にある生活型実験住宅「ΞHome(くすぃーほーむ)」。玄関からキッチンに至るまで本物の住居同様の設備が整い、壁や天井、床にはさまざまなセンサやディスプレイ機器類が埋め込まれた貴重な実験施設だ。
「ロボットを日常に溶け込ませるためには、一般の研究室だけでなく、日常の暮らしの圏内で研究することが大切です。ΞHomeがあるからこそ可能な研究を突き詰めたいですね」
また、棟方准教授は言語を駆使するゲーム「人狼」を人工知能がプレイできるようにする研究にも参加している。この研究が進めば、人とロボットが言語を介して会話することができる未来へと近づくだろう。
「現在は、人狼をプレイする参加者の発汗をはじめとした生体信号をもとに、人の意思決定がいかに行われているかなどを分析しています。最終的な目標は、言語を用いてゲームを行い人に勝つだけでなく、ときには人に負ける、つまり接待プレイができるような、空気を読めるレベルの人工知能開発です」
研究で発汗データを活用する機会が多い棟方准教授は、発汗をてんかん治療に応用するユニークな研究も行っている。
「交感神経機能が上昇すると、てんかん発作が抑えられるという研究データがあります。実は、手のひらの発汗時は、まさに交感神経機能が上昇した状態です。そこで私は、てんかん発作の前兆があった際に、自在に手のひらを発汗させられれば、発作を抑制できると考えました。発汗トレーニングのゲームを開発し、患者さんに取り組んでいただいています」
実際に被験者の多くが、発作の回数が抑えられたという。今後も複数の大学と共同で研究を進める予定だ。
自由な発想で、幅広い研究を進める棟方准教授。話をする表情からは、研究を心から楽しんでいることが伝わってくる。
「いろいろな方に『あなたほど自分が本当にやりたい研究に取り組んでいる人に出会ったことがない』と言われますが、それは私の研究がすべて好奇心から始まっているからだと思います。なぜ多くの人がロボットに愛着を持ちづらいのだろう、なぜてんかんの発作が抑えられないのだろう、という疑問の答えを純粋に追い求める。だから研究が楽しいのです。今後も既成概念にとらわれない研究で、何でもない日常をよくしていくことが私の夢です」
発汗情報から人間の精神状態を調べていく。発汗は、棟方准教授の研究に欠かせない要素で「発汗に関する辞書をまとめる」ことも夢のひとつだという
人狼プレイ中の人の発汗や脈拍といった身体情報を分析し、プレイヤの意思決定の過程やその方法などを探っていく。人狼をプレイする人工知能(人狼知能)は、チェスAIや将棋AIに続く研究のトレンドとなっている
交感神経機能を高めることで、てんかんの発作を抑えられるのではないかという発想で、発汗トレーニングのゲームを開発。トレーニングにより、実際に発作の回数が減るという結果が得られている
京都産業大学は、文系・理系合わせて10学部18学科、約15,000人がひとつのキャンパスで学ぶ総合大学です。この一拠点総合大学の利点を活かし、実社会で活きる高度な専門知識とスキルを養うとともに、学部を超えた知の交流により総合的かつ柔軟な学びを展開しています。
京都産業大学のキャリア形成支援プログラムは、全学部・全年次の学生を対象に多彩な科目を開講。「大学での学び」と「社会での実践」を段階的に積み重ねていくことで、個性や自主性を養い、自ら考え行動する「社会で活躍できる人材」を育成しています。
企業や自治体と提携して進める「O/OCF-PBL(On/Off Campus Fusion-Project Based Learning)」や「インターンシップ」など、段階的にキャリアを形成していくカリキュラムにより、社会で活躍する素養を身に付けます。
■ 理学部:数理科学科/物理科学科/宇宙物理・気象学科 ■ 情報理工学部:情報理工学科 ■ 生命科学部:先端生命科学科/産業生命科学科 ■ 経済学部:経済学科 ■ 経営学部:マネジメント学科 ■ 法学部:法律学科/法政策学科 ■ 現代社会学部:現代社会学科/健康スポーツ社会学科 ■ 国際関係学部:国際関係学科 ■ 外国語学部:英語学科/ヨーロッパ言語学科/アジア言語学科 ■ 文化学部:京都文化学科/国際文化学科
大和ハウス工業、山崎製パン、ファーストリテイリング、大阪ガス、東京電力ホールディングス、村田製作所、Sky、任天堂、カプコン、東海旅客鉄道、西日本旅客鉄道、阪急電鉄、日本通運、日本郵政、JTB、三井住友銀行、ゆうちょ銀行、日本生命保険、日本気象協会、国家公務員一般職(厚生労働省・財務省税関・気象庁)、国税専門官、京都府庁、大阪府庁、京都市役所、警視庁、京都府警察本部、東京消防庁、京都市消防局、京都府教育委員会、大阪府教育委員会 ほか
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