Professor

長森英二

大阪工業大学

工学部 生命工学科 准教授
生物化学工学/微生物培養工学/細胞・組織培養工学

日本随一のバイオリアクターを用いて
バイオ由来製品の社会実装を加速する

バイオ由来製品の生産技術開発で
カーボンリサイクルを実現

 暮らしに欠かせない電気などのエネルギーや、プラスチックをはじめとした化学製品は、石油や石炭といった化石燃料によって生み出されている。しかし、世界中で消費量が年々増加する化石燃料は急速に枯渇しつつある。また、燃焼時に発生する温室効果ガスは大きな環境問題にもなっている。そこで注目されているのが、化石燃料からバイオマスへと原料を置換した「バイオ由来製品」だ。

 現在では、バイオプラスチックやバイオ燃料、生理活性物質や抗体医薬、再生医療に必要な細胞製品、クローン苗など、多彩なものがバイオの力で生み出されている。しかし、工業化には課題も多いという。その中で、大阪工業大学はNEDOのプロジェクト「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画し、2021年に「バイオものづくりラボ」を開設。この施設を拠点に、バイオ由来製品の社会実装を促進する研究を行うのが長森英二准教授だ。

「化石燃料の代わりにCO2と微生物などを用いて生み出されるバイオ由来製品が増えれば、カーボンリサイクルの実現は加速します。しかし現状、高コストであることや製法に汎用性がないこと、実験と実践をつなぐ施設が少なく限られた企業しか試作ができないことなど、バイオ産業への新規参入には多くの障壁があります。また、バイオリアクターなどの装置を正しく扱える技術者も多くは育っていません。そこで私は、バイオ由来製品の生産技術の標準化、試作支援、技術者教育という3つの柱を軸に活動しています」

※国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

バイオ産業の新規参入や人材育成にも
貢献する「バイオものづくりラボ」

大量のバイオリアクターでの検証で
素早くスケールアップを実現

 「バイオものづくりラボ」ではバイオリアクターを0.25Lサイズで24連、1Lサイズで12連、5Lサイズで4連と、他大学に類を見ないほどの数量で設置している。

「バイオ由来製品の生産技術の標準化に向け、用いる微生物を培養するのに適した温度やpH、培地成分などを見極める『基礎検討』、大型発酵槽の通気と撹拌などの条件を再現しての『流加培養実験』などを行います。大量に並列されていることで一度にさまざまな条件下で検討ができるのです。そして得られた情報をビッグデータ化し、データ駆動による効率的な条件最適化を実現します。従来の仮説検証型で小規模かつ地道に最適化するやり方とは一線を画する新しい研究手法であり、育種や試作、評価を今までよりも、最大、数年単位で短縮できると見込んでいます」

 さらに教育用としては国内の大学で唯一、30Lサイズのバイオリアクターも完備している。

「30Lサイズは持ち運びが不可能なため、培地作製や滅菌もその場で行う必要があります。また、さらに大型なタンクでは混ぜてもなかなか均一にならなかったり、下部には巨大な水圧がかかったりもします。この30Lサイズでは工場で大量生産する際を模した条件下での検証実験が行えます。30Lサイズで生産できれば、基本的に数十トンサイズへの応用が可能です。まとめると、本施設では、標準培養条件でつながれた小規模から中規模のバイオリアクター群での検証で素早いスケールアップを可能にし、大量生産・社会実装のスピーディーな実現に貢献しているのです」

企業との共同研究を進め
持続可能な社会の実現に寄与

 「バイオものづくりラボ」は民間企業へも門戸を開き、長森准教授は多彩な企業と共同研究を進めている。また、バイオリアクターの使用方法や理論を伝えるセミナーも「NEDO特別講座」として開催。すでに数多くの企業や大学等と共同研究を進め、セミナーも30社以上が参加して学んでいる。

「企業との共同研究では、例えば日本が輸入に頼っている食料原料のひとつをバイオの力で大量生産することに成功するなど、続々と成果も生まれています。また、実際に製品として製造する際は洗浄がコストや安全面で問題になるという企業からの要望を受け、使い捨てのシングルユース培養装置を開発するなど、バイオリアクターや実験機器の進化にも貢献しています。今後も、バイオ由来製品という選択肢を世の中に増やし、持続可能な社会を実現していくことが私の目標です」

国内随一の施設での実験を通して、バイオリアクターに関する理論と実践的な技術を学生に指導。企業へのセミナーも定期的に開催するなど、技術者教育にも力を注いでいる

国内の大学で唯一、教育に使用可能な30Lのバイオリアクターを完備。30Lサイズで生産できれば、数十トンクラスでも問題なく作業を行える証明となる

バイオリアクターが大量に並列されていることで、一度にさまざまな条件下での検討が可能。得られた情報をビッグデータ化し、データ駆動による効率的な条件最適化を実現することで、大量生産・社会実装のスピーディーな実現に貢献できる

大阪工業大学

左・梅田キャンパス/右上・大宮キャンパス/右下・枚方キャンパス

2022年に創立100周年を迎える伝統の実践教育

大阪工業大学は4学部17学科を擁する理工系総合大学で、実就職率が全国第4位、関西の私立大学では12年連続第1位、文系の知的財産学部でも学部系統別〈法学系〉で全国第2位の高い就職力を誇ります。この背景には、建学の精神に基づく教育、先端分野を切り拓く研究力があり、理論と実践を兼ね備えた人材を育成し、多くの専門職業人を世に輩出しています。

工学部機械工学科に「研究推進クラス」、建築学科に「先鋭活動推進コース」を開設!

2022年4月、機械工学科では、学部+大学院6年間一貫の研究推進クラスを、建築学科では、大学院との連携強化による、学生の能動的な学びを育む先鋭活動推進コースを開設しました。マンツーマン指導、ハイレベル少人数授業、先取り大学院授業等により早期に研究活動を開始し、グローバルに活躍する研究開発者、建築技術者を養成します。

学部学科

【大宮キャンパス】 ■ 工学部:都市デザイン工学科/建築学科/機械工学科/電気電子システム工学科/電子情報システム工学科/応用化学科/環境工学科/生命工学科 【梅田キャンパス】 ■ ロボティクス&デザイン工学部:ロボット工学科/システムデザイン工学科/空間デザイン学科 【枚方キャンパス】 ■ 情報科学部:データサイエンス学科/情報知能学科/情報システム学科/情報メディア学科/ネットワークデザイン学科 【大宮キャンパス】 ■ 知的財産学部(文系):知的財産学科

主な就職実績(2022年3月卒業生実績)

大林組、鹿島建設、積水ハウス、住友林業、大成建設、大和ハウス工業、関西電力、大阪ガス、きんでん、NTTコムウェア、オプテージ、富士通、ヤンマーホールディングス、西日本旅客鉄道(JR 西日本)、東海旅客鉄道(JR 東海)、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、キユーピー、資生堂、グンゼ、ユニ・チャーム、大阪府庁、大阪市役所、兵庫県庁 ほか

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